俳句の作り方     曼珠沙華の俳句

 青空に無数の傷や曼珠沙華    藤岡筑邨ふじおかちくそん

あおぞらに むすうのきずや まんじゅしゃげ

 

 

 曼珠沙華まんじゅしゃげが秋の季語。

「ヒガンバナ科の多年草で、彼岸ごろ地下の鱗茎から30センチから50センチの茎をのばし、

赤い炎のような花をいくつも輪状に開く。

花後、細い葉が出て翌年春に枯れる。

 地方によって様々な呼び名がある。・・・死人花、捨て子花、狐花

 白花曼珠沙華は近縁種。

 鱗茎はでんぷんを多量に含み、有毒だがさらして救荒食物とするため

畑の傍らや墓地など人里に近いところに植えられた。」

 (俳句歳時記 秋 角川書店編)

 青空に無数の傷や曼珠沙華

 

 

 青空に無数の傷や曼珠沙華

 

 

 句意を申し上げます。

傷を感じる青空と曼珠沙華の赤が、私の内なる痛みを照らし出す。

 

 

 鑑賞してみましょう。

晴れ渡る青空には細い無数の傷が浮かんでいます。

傷は私の目にだけ見える痛みの痕跡。

曼珠沙華の赤は痛みを呼び覚ます色でもあります。

曼珠沙華の前に立つと、空の傷に自分の影を重ねてしまいます。

 傷の正体は、季節が変わる度置き去りにされた感情です。

青空はそれらを隠さずむしろ光の中で際立たせるのです。

曼珠沙華の燃えるような赤が沈黙の底を照らします。

青と赤の対比の中に言葉になる前の痛みを見るのです。

 無数の傷は空の瑕(きず)ではなく私の内部の裂け目です。

曼珠沙華は裂け目に寄り添うように咲いています。

青と赤が交わる一瞬に季節の深さが姿を現します。

私は青と赤の交差に立ち尽くしてしまうのです。

 青空に無数の傷や曼珠沙華

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